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2015年05月05日

使っていた部

「うわあ――――っ」
 落ちた。
 そんなに高くは無いが、 不意を突かれて 受身も取れずに転がる。

「痛てて纖瘦店、 ううっ、 ここは何処だ。
 真っ暗で 何も見えないじゃないか。 ユン!  大丈夫か」
「ううっ、 頭ぶつけた」

 何処にも 隙間が無いのだろう。
 確かに これを作った者は、 いい仕事をしている。
 目の前にかざした 自分の手さえも 見えない 真の暗闇だ。
 ユキアは、 覆面を解いて 頭を調べたが、 幸い 傷にはなっていないようだ。
 どうせ 何も見えないから安利、 そのまま覆面を懐にしまう。

「何とか 大丈夫みたい」
 手探りしてみる。
 下は土のようだ。 落ちた場所からは 他に触れるものが無い。

「きゃあ、 お尻触るな!」
「ご、 ごめん。 だって見えないのだ。
 怖いから 手を繋ごうとしただけだ。 本当だ。
 そちらから手を出してくれ。
 私は 何処を触られても嬉しい、 違った、 大丈夫だ。 うぐっ」

 ユキアの手が カムライの顔面に、 ぴたりと当たった。
 その手をつかんで 繋ぐ。 ゆっくりと 立ち上がった。

「ホジロー、 助けてー」
 二人で叫んだが、 離宮は広い。 近くに居ないようだった。

「全く、 補修だなどといって こんなものを作っていたとは、 最低だ。
 しょうがない、 手探りで 出口を探そう」

 闇の中を ゆっくりと進んで、 壁を探り当てた。
 それを離さぬように 伝って 進む。
 時々 大声をあげて ホジロを呼んでみるが、 返事が返ってくることは無かった。
 役に立たない男だ。

 壁伝いに かなり進んだは安利 ずなのに、 何処まで行っても 変化が無い。
 互いに 繋いだ手のぬくもりと 声が無ければ、 心細いこと この上ない。
「ねえ、 もしかして、 同じところを 何周もしているのじゃないかしら。
 この ちょっとでこぼこした感じ、 さっきも触ったような気がする」
「うん、 ということは 出口が無い。 ……一休みして、 座って考えよう」

 カムライが言って その場で腰を下ろし、 あるはずの壁に 背を預けようと もたれかっかったが、
 壁は無かった。
 どたり と転がる。
 手を繋いでいたユキアも 引っ張られて、 カムライの上に 倒れこんだ。

「うわあ、 穴が開いている。 こんなに低い位置にあったから 素通りしていたのだ」

 四つん這いになって 探っていたら、 もっと早くに 気づいたかもしれない。
 真っ暗闇の中で 立ち上がる勇気があった為に、 余計に 手間取ったといえよう。
 手で探ってみる。
 狭い坑道のようだ。 這って進むしかない。

 探っていた手を、 胸の上に載っているユキアの 顔の辺りに伸ばしてみた。
「うふ、 ユンのほっぺは、 すべすべで柔らかい。 覆面をはずしたのか」
 逃げられた。

「ユン、 何処だあ――っ!」

「行ってみましょう。 はい、 進んで頂戴、 付いていくから。
 それとも そこをどいてくれたら、わたしから行くわよ」
「いや、 私が先に行く」

 坑道は ゆるい上りになっていた。
「ユン 、居るか」
 時々 心配になったカムライが 声を出して確認するのに、 ユキアが 面倒くさそうに返事をし、
 二人は進んでいった。

 やがて、 カムライが止まった。
「あれ、 突き当たった。 行き止まりかなあ……。 あっ、 竪穴になっている」
 立ち上がって 腕を伸ばしてみる。
 塞いでいる物を持ち上げると、 一気に 光が押し寄せた。

 目が慣れるまで しばらく待って、 よじ登るように 外に出た。
 そこは 裏木戸の近くだった。

 ユキアを引き上げようと、 振り向いたが、
 すでに覆面を被ったユキアが 自力で 上がったところだった。
 カムライが一人で、 ぶつぶつ 言っている。
「覆面なんか しなくていいのになあ」
「落とし穴があるなんて、 物騒な離宮だわね」
 ユキアが、 かまわず文句を言った。

「私の知る限り、 あんなものは 無かったはずだ。
 あそこは 応接室に使っていた部屋だが、
 気に入らない客なら、通す前に とっ捕まえるのが、 我が王家の 家風だ。
 修復とかいって 変な仕掛けを造ったものだ。
 要らないのになあ、 危ないし。 出られてよかった」

 そういえば、 もう一人いたはずだ、 と二人が思い出した時、
 ちょうど ホジロがぶらぶらとやって来た。

「いやあ、 すごいね。 まるでからくり屋敷だな。 面白すぎる。 作った人に 会いたいなあ」
 どうやら、 他にも いろいろあるらしい。



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